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先日の展示、展示が決まっていた入賞作のテーマはアンデルセンの『赤い靴』でした。
ですから、今回はアンデルセンの物語から4点をモチーフに選んで描き下ろすことにしました。

アンデルセンの童話をいくつも読んで感じるのは、
思ったよりも「悲しい」とか「こわい」とか「つらい」とか。。
でも何となく共通しているのは「執念深さ」のような気がしています。

教会に赤い靴をはいていってしまった女の子は、どうしても許してもらえない。

おやゆび姫は繰り返し望まない場所へ移動するけれど、自分の幸せをあきらめない。

雪の女王にさらわれた親友の少年を捜すために少女は大人になるほどの時間、旅を続ける。

白鳥になった兄達を救うために、妹はつらい試練に決して屈せず処刑されそうになるまで耐え続ける。

片足のすずの兵隊はバレリーナを思い、どんな苦境にあっても、真っすぐに立ち続ける。

そんな、ちょっとやそっとでは解決しない人生のあれやこれやを子どもに語るアンデルセンの雰囲気を出せたらいいなと思い描きました。
簡単なあらすじと共にどうぞ。

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『赤い靴』
いつも裸足だった貧しい少女は、親切な靴屋が作ってくれた赤い靴を母の葬儀に履く。
その後,裕福な老婦人に引き取られ不自由なく暮らすことになったが、
少女は赤い靴に心を奪われ、履いていくなどもってのほかであった教会へまでも赤い靴を身につけ通い続ける。
すると天罰であろうか、靴を履いたまま踊り続ける運命に。
靴を脱ぐことも出来ず、止まることも出来ず踊り続けながらこれまでを後悔し、
ついに靴ごと足を切り落としてもらった少女は、木の足をつけ牧師の家でひたすら反省の日々を送る。
そうして月日が経ち、ようやく天使に迎えられることになるのだった。

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『おやゆび姫』
チューリップから生まれた親指姫は、ある日ひきがえるにさらわれてしまう。
池の蓮の葉の上に置かれ途方に暮れたところ、蝶に助けられる。
その後、冬の森で凍えてねずみの世話になるが、そこでモグラとの結婚を決められてしまう。
地中の部屋で傷ついたツバメを介抱しながら冬を過ごす親指姫は、太陽のない暮らしを思い、憂いた。春になり、回復したツバメの背に乗って花の咲く場所に連れて出してもらうと、
そこは同じような小さい人が住む国であった。
小さな王子様に「マーヤ」という新しい名前をもらい、仲間たちと幸せに暮らすのであった。

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『雪の女王』
カイとゲルダという、仲のいい少年と少女がいた。
あるとき悪魔の作った鏡の破片がカイの目から体に入ってしまう。
すると彼は人が変わったようになり、雪の女王と共に女王の城へと姿を消してまった。
ゲルダは彼を探した。寒い思いをし、恐ろしい思いもし、いろいろな人に尋ねながら長い旅をする。
ついに雪の女王の城を見つけ出し、ゲルダが喜びの涙を流したときにカイの凍り付いた心が溶け、
カイの涙で鏡の破片も目からこぼれ落ちた。
ふたりが手を取り合ってもとの道を旅して家に戻ったとき、
カイとゲルダはすでに大人の姿になっていたのだった。

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『白鳥の王子』
ある国に11人の王子とひとりの王女がいた。
しかし性根の悪い継母により、王子達は白鳥に姿を変えられ城を追われ、
妹のエリサもひどい扱いに堪えかねて城を出た。
兄と別れて数年、彼女が野をさまよっていると、
夜の間だけ人間の姿に戻ることのできる白鳥の兄達に再会する。
ようやくの再会に喜ぶエリサは彼らの魔法を解くために、
刺のあるイラクサの葉で一言も言葉を発せずに11枚のかたびらを編むという試練に耐えつづける。
口をきかないため様々な誤解を受け、ついに処刑されることになったその時、
かたびらが完成し、空に舞う白鳥たちに11枚のかたびらが投げかけられる。

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『すずの兵隊』
材料のすずが足らず、片足のおもちゃの兵隊がいた。
兵隊は同じく片足で立つバレリーナの人形に恋をしていた。
しかしある日、小悪魔のいたずらで兵隊は窓の下に落ちてしまう。
しっかりものの兵隊は、路上から水路へ、水路から海へ、海で魚に飲み込まれてもなお立っていた。
そして再びもといた屋敷で魚の腹から出され、バレリーナと再会する。
その時、またしても小悪魔の思惑か、兵隊はその家の子どもによってストーブの炎の中に投げ込まれてしまう。
炎のなかでも立ち続ける兵隊。
それを追うように風に吹かれたバレリーナも炎に落ち、
ふたりはハート形の鉛の塊とドレスの房飾りだけとなるのだった。
ギャラリーハウスMAYAさんでの『装画を描くコンペティションvol.16』受賞者展、
無事に終了いたしました。
ご来場いただきましたみなさま、気にかけてくださったみなさま
どうもありがとうございました。

ずいぶん前のことになりますが、イラストレーターを志しはじめた頃、
当時の勤め先だった青山一丁目から青山塾のある表参道まで、
毎週あちこちのギャラリーに立ち寄りながら、歩いていたことを思い出しました。
MAYAさんでもたくさんの展示を見せていただき、ただただ感激して、
在廊されている作家さんにドキドキしながらつたない質問をしたりしながら、
多くのことを感じ、学ばせていただきました。
もちろん今でも、これからも、きっとそうなのだと思います。

そんな憧れでしかなかったギャラリーで初めて展示をさせていただくことは
緊張感もあり、光栄なことでありました。
『装画を描くコンペティションvol.16』受賞者展_e0084542_18292228.jpg


会期中は、多くの方に作品を見ていただき、感想やお言葉を頂戴しました。
特に今回のコンペの審査員の方々には、入賞入選者との懇親会で一人一人に講評をいただいて
そのみなさんへの言葉を伺うのもとっても貴重な体験でした。

ご一緒した入賞者のみなさんとも、ちょっとした同僚気分で楽しく会期中をすごさせていただいて
ああ、また頑張ろう!と勇気の湧いた、何よりの機会となりました。
毎年装画という課題に取り組むチャンスと、このような展示の機会を下さったMAYAさんに
改めて、心から感謝申し上げます。

『装画を描くコンペティションvol.16』受賞者展_e0084542_1837447.jpg

ギャラリーハウスMAYA『装画を描くコンペティションvol.16』受賞者展_e0084542_10461412.jpg


昨年受賞したギャラリーハウスMAYAさんのコンペでの受賞者による展示が開かれます。
グランプリの方はギャラリーハウスMAYAで個展、
ほかの入賞者5名はMAYA2でグループ展を同日程で行います。

私はグループ展示に、入賞作品に新作を加え5点を展示いたします。
MAYAさんのコンペは「装画を描く」ことがテーマとなっていますので
毎回、課題本などを読み込んで描かれた力作が並びます。
自分も同じ本をモチーフにしたはずなのに、こんなに多様なアプローチがあるものなのか…
と、感じ入ることの多いこの展示。
今回も、皆さんとても魅力的な作家さんで、私自身もとっても楽しみ。そしてすこし緊張。

私の入賞作品は課題本アンデルセンの『赤い靴』でしたので、
展示のための作品もアンデルセン童話をモチーフに描きました。
皆さんご存知のお話も、そうでもないお話もあるかもしれません。
「童話」とはいえ、とてもシビアな、
アンデルセン物語の大人な部分を表現できていたらいいなと思います。

寒い季節ではありますが、お運びいただけましたら嬉しいです。

    *     *     *
ギャラリーハウスMAYA『装画を描くコンペティションvol.16』受賞者展
2017年2月13日(月)〜18日(土)
11:30〜19:00(最終日17:00まで)
初日夕方オープニングパーティ

グランプリ 木原未沙紀 個展 @ギャラリーハウスMAYA
準グランプリ+審査員賞5人展 @MAYA2
(鈴木圭、岩堀敏行、原田俊二、吉野くみ、いわがみ綾子)

ギャラリーハウスMAYA
107-0061東京都港区北青山2-10-26
最寄り駅:東京メトロ銀座線外苑前駅
ご無沙汰しております。
すっかり新しい年になりました。

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昨年、企業カレンダーのお仕事を初めてさせていただきました。
panasonic様のお店で年末にもらえるカレンダーです。
線画のふんわりとした雰囲気で、ポケット付きの便利もの。
以前から線画タッチでカレンダーを作りたいと思っていましたので、
このような形で実現できてとっても嬉しい。
12ヶ月を通して、一つの緩やかなストーリーを感じさせるつくりとなっています。

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1月は物語のスタート。
私は一年間、どんな物語を紡いでいくのだろう。
そんな気持ちで、今年も一年過ごしていきます。

本年もどうぞよろしくお願いいたします。
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幻冬舎から発売中、藤堂志津子さんの『独女日記3』でカバー装画を担当しました。
シリーズ3冊目で最終巻の今回は、明るい未来を思わせるような優しいイエローになりました。

幻冬舎のデザイナーさんには絵に合わせた素敵なデザインをしていただいて、
装画はやはり1冊の本として完成するんだなと、毎回出来上がりを見るたびに感激します。

絵の中で私が差し色に使った色を、本そのものの色にしてくださって、
カバーの縁からちらっとそれがのぞいている様子などは、
着物の半襟や帯締めの色合わせのように粋な雰囲気。
そんな発見も、本の魅力ですね。

藤堂先生が愛犬はなちゃんとのふたり暮らしの日々を綴ったエッセイ。
書店で見かけましたらぜひお手にとってご覧下さい。