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読書の記録。

『それからはスープのことばかり考えて暮らした』 吉田篤弘著

勧められて手にした本。
暮しの手帳に連載されていた物語とか。
すごく、「らしい」感じ。
ゆるやかで温かくてちょっと切なくてノスタルジックで、で、今らしいおしゃれ感がある。
装丁のせいなのか、白い画面を思わせる。
個人的には、主人公の部屋の窓から見える教会の十字架と
その上の部屋に住むマダムが窓からタバコをふかす様がとっても好き。

内容はいたって素朴なのだが、そこが多少おしゃれすぎるかなあ、と思う部分もある。
が、
最後の「名無しのスープのつくり方」という2ページがすごくいい。
話に出てくるスープのつくり方が22行の箇条書きになってるのだけど
それが
「・期待をしないこと。
・どんなスープが出来上がるかは鍋しか知らない。
・鍋は偉い。尊敬の念をこめて洗い磨く。が、期待はほどほどに。」
とか
「・鍋に水を入れ、火をつけると、そのうち湯気がたつ。湯気もまた尊い。
・換気を忘れないこと。窓をあけて、ついでに外の様子も見る。」
など。
ああ、このスープは人生のことなんだなあ、などとふんわりとした気分で思えるところが
この本の素敵なところなんじゃないかと思う。
by ayako-iwagami | 2008-10-19 21:47 | 読んだもの。