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『花に聞くvol.11水仙』

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「水仙」がテーマの「花に聞くvol.11」展、無事に終了いたしました。
ご来場いただきました皆さま、気にかけてくださった皆さま、
どうもありがとうございました。

20名のイラストレーターの描く「水仙」が咲き乱れたギャラリーは
春の訪れを心待ちにするような温かい雰囲気がありました。

昨年は鉛筆、色鉛筆の線画をよく描いていましたが、
今回は面の色合わせがしたくなって、久しぶりにアクリルガッシュでぺったりと塗ることに。
とっても気持ちよい時間でした。

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以下は、展示キャプションにつけた、タイトルとコメントです。
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『香りを一輪』
若かったころ、生け花のお稽古で水仙の伝統的な型を生けるのが好きでした。
その行程は実のところかなりハードで、茎も葉もこれでもかというほどに
つぶしたり引っ張ったりしながら型を作り上げていくのですが、
意外なことに水仙は、細い首から可憐な花を微かに揺らしながら咲くさまとは裏腹に、
とても丈夫なのです。
それだけの手を加えてもなお、水を吸い上げるその生命力と香りに凛とした強さを感じます。
今回は、そんな強さをも秘めたあの香りを表現したいと思い、描きました。
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そう、私は16歳から12年間ほど華道を習っていました。
決してまじめとは言えなかったと思いますが、お稽古の時間は好きで、
先生もずいぶんと目をかけてくださいました。
そのころは絵も描いていませんでしたから、私にとって長らく
「創る」とか「表現する」ということは花材を扱うことでありました。

時おり、絵を見たかたに「間の取り方が変わってる」とか「構図が独特」と言われることがあります。
良いのか悪いのかは分かりませんが、変わっているのはおそらく
花を生ける時の「間」や「空間」の感覚が残っているのかもしれない、と考えたりしています。
かといって、今、上手く生けられるかと言えばすっかり忘れてしまったのですけれど…。
とはいえ、生け方だけでなく、先生からも先輩の方々からも様々なことを教えていただいた時間は
いまでも心に残っています。

そんなことを思いながら、今回は花鋏(はなばさみ)を持ち出して描いてみました。
この冷たさと重み、黒さとカチンという音の潔さに触れると、背筋の伸びる思いがするのです。